世界中で肥満の増加が問題になる中、日本では若い女性の多くが痩せすぎと言われ、全く減らない状況が続いています。
行き過ぎた「痩せ体型」への願望は深刻な健康被害を招くとして、政府は「BMIが18.5未満の「低体重」に該当する20代女性の割合を20%に下げる」という内容の目標を設定しましたが、現在まで結果は出ておらず、推移は横ばいを維持しています。
では、食糧が安定した日本でなぜ痩せすぎと言われる女性が多いのか?そして、痩せ過ぎと言われる体型や無理なダイエットが招く健康被害を解説します。
【若い女性が目指す「シンデレラ体重」と健康面への影響を解説】
【ダイエットで重視すべきは体重よりも体脂肪?健康的に美しく見える「美容体重」とは?】
もくじ
日本特有の痩せ過ぎ問題
日本では以前からBMIは18.5以下の痩せ過ぎと言われる女性の割合が多いことが健康的に問題であると指摘されていました。
この痩せ過ぎ問題の始まりは1960年から始まりました。1960年以降、冷蔵庫とガスの普及・ファミリーレストランなどの外食産業の発展・レトルトや冷凍食品の開発などがあり、日本全体の食文化が変化し、食生活が豊かになりました。十分な栄養を摂取できる環境に変化し、日本人の平均身長は伸びましたが、若い女性の平均体重はそのままでした。結果、若い女性のBMIは低下してきたのです。通常、食糧が安定するにつれてBMIの平均は上がるものですが、日本では逆の現象が起こっています。これは世界的に見ても珍しいことです。
では、なぜ日本では若い女性の体重が増えずにBMIが下がったのか?
それは、日本で1953年に行われた第2回ミス・ユニバース大会にて日本代表の伊東絹子さんが第3位で日本人初の入賞をしたことがきっかけでした。伊藤さんの当時の日本人離れした八頭身のスタイルが話題となり、「八頭身美人」が当時の流行語となり、日本のファッションモデルの先駆け的存在となりました。
それから長身と細身が日本女性の美の必須条件となり、美人の基準が顔面至上主義からプロポーション重視に変わったのです。その基準は現在まで変化せず、現在では頭が小さく手足が非常に長いアイドル達が登場するようになりました。


現在の若い女性の理想は「シンデレラ体重」?
2016年ごろからSNSを中心に10〜20代の女性達の間で「シンデレラ体重」というワードが盛んに発信されるようになりました。
シンデレラ体重とは、理想的体型の象徴と言われており、別名「モデル体型」とも言われています。目安はBMIが18程度の体重です。
BMIが18程度の体重を具体的に数値にすると、
1.6(m)×1.6(m)×18(BMI)=46.08kg
となります。
BMIが18という値は日本肥満学会が定めた標準体型を下回る数値であり、「低体重」と言われるレベルです。理想的体重と言われるシンデレラ体重ですが、実は健康的リスクが高いとして多くの医療関係者が警鐘を鳴らしています。
痩せ過ぎによる健康被害
日本肥満学会での判定基準ではBMIが18.5〜25未満が標準的体格であり、健康面でケガや病気のリスクが少ない理想的数値とされています。
しかし、必要以上に減量することは健康面での悪影響を及ぼす可能性が高いので、2013年から日本政府は健康づくり計画「健康日本21(第2次)」で、BMIが18.5未満の「痩せ」に該当する20代女性の割合を20%に下げる目標を設定しました。(しかし、現在までその推移は横ばいのままで結果は芳しくありません。)
BMI値 | 判定 |
---|---|
18.5未満 | 低体重(痩せ型) |
18.5〜25未満 | 普通体重 |
25〜30未満 | 肥満(1度) |
30〜35未満 | 肥満(2度) |
35〜40未満 | 肥満(3度) |
40以上 | 肥満(4度) |
不妊・無月経などの婦人科系の問題が発生する可能性が高い
痩せ過ぎの状態は身体的・精神的ダメージが大きいです。
特に、女性は脂肪の減少によってホルモン分泌が抑制されて無月経になると言われています。
無月経の状態が長期に渡る場合は、女性ホルモンの分泌が低下し、ホルモンバランスが崩れて子宮の萎縮や骨量の減少がおこるため、専門の治療が必要になります。また、妊婦が痩せ過ぎの状態の場合には早産の可能性も高く、生まれた赤ん坊の健康にも影響が現れます。(低体重・生活習慣病のリスクが高いetc)
女性の体はホルモンバランスを保つために最低限必要な脂肪量があり、それを下回るほど減量することで無月経・不妊・早産などが発生してしまいます。
骨密度が低下し、怪我のリスクが高まる
急激なダイエットによって卵巣の働きが低下し、骨折の可能性が高まります。これは骨の強度、骨密度が低下しているからです。
なぜ骨密度が低下するのか?
骨は毎日破壊(古い骨を吸収して代謝を上げる役割)と再生(新しい骨を作る役割)を繰り返しており、この役割のバランスによって骨の量と強度の安定が保たれています。この機能には、卵巣と脂肪から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)が大きく関わっています。
卵巣と脂肪から分泌されるエストロゲンによって骨の強度が維持されています、しかし、急激な脂肪減少によってエストロゲンの分泌が抑制され、骨密度の低下に繋がります。
骨密度が低下することで、骨折などの大怪我のリスクが高まり、また骨粗しょう症の発症の可能性もあります。
冷え性や肩こりが悪化する
低体重の状態にもなると、脂肪だけでなく筋肉も減少しています。
筋肉は基礎代謝の中でも最もエネルギーを消費します。体を支えるだけでなく、体温を調節する役割も担っている大切な部分です。
筋肉量が減ることで、代謝が落ち、体温調節の機能ができず、冷え性が悪化する可能性があります。
また、残った筋肉で体を支えなければならないので筋肉が凝り固まりやすくなり、血行が悪くなります。結果として、首・肩まわりの疲労が溜まり、肩こりも悪化してしまいます。
大切な健康と美の両立!
若い女性には、美しさを求めて過剰なダイエットをしている方が多いです。
カロリー制限や偏った食生活をすることで減量に成功したとSNSで発信している方も多いですが、その多くが脂肪と筋肉も削れた不健康な痩せ方をしています。脂肪と筋肉が削れることで血色が悪くなり、けがと病気のリスクが高まるのでメリットと言えるメリットはないでしょう。
美しさのためにダイエットをしているかと思いますが、それは一体誰のためのダイエットでしょうか?
自分がキレイになりたくて世間が求める基準に従った結果、減量し過ぎて体を壊してしまう事態になっては本末転倒です。
ダイエットに大切なのは、健康的に筋肉をつけて脂肪を適度に落とすことです。それにより、健康的に血色の良いメリハリのある体型を得ることができ、見た印象も憧れを感じるような美しさになります。
ダイエットをする際には、無理のない程度のペースで運動と食生活を見直し、ゆっくりと体重と体脂肪を落とす方が効率的で健康的にも良いです。